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最後の一輪が落ちた朝、胡蝶蘭の花茎をどこで切りますか

窓辺のテーブルに置かれた胡蝶蘭の鉢と、落ちた一輪の花、花茎を切るはさみ

こんにちは。
胡蝶蘭専門ブログ「オーキッド・クロニクル」の桜井蘭です。
最後の一輪が落ちた朝、残された茎を前に、はさみを持ったまま迷ったことはありませんか。
切る位置は、もう一度咲かせたいのか、株を休ませたいのかで変わります。
今日は、まだ使える節の見分け方と、葉と根の様子から切る位置を決める方法、そして秋に切ったあとの待ち方を、順番にお話しします。
読み終えるころには、手元の一鉢をどこで切るか決められるはずです。

花茎を切る日は、本当は最後の一輪より少し前です

生産者は花が残っているうちに切り始めます

題名に「最後の一輪が落ちた朝」と書いておきながら恐縮ですが、もう一度咲かせたいなら、その朝では少し遅いこともあります。
さいたま市の胡蝶蘭農園がまとめた黒臼洋蘭園の二度咲きの手順では、花がまだ3分の1ほど残っているうちに花茎を切ります。
花がすべて枯れて時間がたつと、茎まで枯れて二度咲きが難しくなるためです。
三重県のファレノプシス(胡蝶蘭)の管理方法も、花が残り2〜3輪になった時点で切るよう案内しています。

それまでのあいだ、しぼんだ花は花首のところで早めに摘み取っておきます。

まだきれいに咲いている花に刃を入れるのは、わたくしでも少しためらいます。
そういうときは、切った花をお皿や小さな花瓶に生けてしまいましょう。
食卓でゆっくり見納めができると思うと、はさみを持つ手がだいぶ軽くなります。

すべて散ったあとなら、花茎の色で判断します

多くの方が花茎のことを思い出すのは、全部の花が散ったあとだと思います。
それでも、茎に緑の部分が残っていて、そこに節があれば、まだ切り方を選べます。
黄色や茶色に枯れ込んだ部分は残さず、その下の緑のところで切りましょう。
茎全体が枯れているときは、根元の近くで切って、この一本はおしまいにします。

切る位置の答えが割れるのは、ねらいが二つあるからです

三つの情報を並べてみました

調べ始めた方がまず戸惑うのは、書いてある位置がばらばらなことです。
日本の公的機関、国内の生産者、海外の蘭の協会から一つずつ選んで、並べてみました。

情報源切る時期切る位置
三重県花が残り2〜3輪のころ下から2〜3節を残す
黒臼洋蘭園花が3分の1ほど残っているころなるべく多くの節を残す
米国蘭協会花が終わったあと未使用の節があれば2番目の節の上、なければ根元近く

節の数は少しずつ違いますが、節を残してその上で切る点はどれも同じです。
花芽は節から出るので、残すべきものは茎の長さより節だと考えてください。
わたくしは「何節目か」にこだわりすぎず、まだ使える節が残っているかどうかを先に見ています。

「咲かせる」と「休ませる」で切る場所が変わります

表の中で米国蘭協会だけは、二度咲きそのものに慎重です。
Where do I cut the flower spike when it is finished?によると、二度目の開花は株の負担になりやすく、花もふつうは最初より小さく、勢いも弱くなります。
試すのは株が丈夫なときに限り、次の開花に向けて回復させるほうがよい場合も多いそうです。

節の上で切れば、早めにもう一度花を見られるかもしれません。
根元近くで切れば、株の力を葉と根に回せます。
どちらが正解かより、目の前の株がどちらに耐えられるかで考えるほうが、失敗は少なくなります。

切るのが不安なら、茎が緑のうちはそのまま様子を見る手もあります。
米国の蘭の栽培資材店First Raysは、茎を切って二度咲きを促すと株が弱ることがあるとして、切らずに待つ方法をすすめています。
力のある株なら自分で咲くし、そうでなければ咲かない、という考え方です。
茎が黄色くなってきたら、そこで根元近くで切れば済みます。

使える節と、使い終わった節の見分け方

花茎をよく見ると、小さな三角形の皮をかぶったふくらみが点々とあります。
これが節です。
米国蘭協会の説明では、皮が茎にぴたりと沿っている節はまだ使えます。
花や枝が一度出た節は、皮が押し広げられて茎から浮いていて、そこからはもう何も出てきません。

花がついていたあたりの節は使い終わっているので、見るのは株に近い下のほうです。
皮が沿っている節を下から数えて、残したい節のすぐ上で切ります。
未使用の節が見当たらなければ、二度咲きは見送って根元近くで切りましょう。

二度咲きか根元か、決め手は葉と根です

葉と根で、株の余力を確かめます

黒臼洋蘭園の直営店であるらんや小石川店の花芽の解説によると、葉が少ない株や植え替え直後の株、根腐れで弱った株は、回復を優先して花芽をつけないことがあります。
葉の枚数の目安は、販売店の解説でも3枚以上から5枚以上まで幅があり、決まった基準はないようです。
わたくしは枚数と一緒に、葉の厚みと張りを指で確かめています。
鉢の縁や透明な鉢の外から根が見えるなら、太さや色も手がかりになります。

株の様子切る場所
葉が厚くて張りがあり、根も太い。花茎は緑で未使用の節がある節の上で切り、二度咲きを試す
葉にしわがある、または枚数が少ない根元近くで切って休ませる
根が黒ずんでいる、または柔らかい根元近くで切り、春の植え替えで傷んだ根を整理する
花茎全体が黄色や茶色に枯れている根元近くで切る
今回の花がすでに二度咲きだった根元近くで切って休ませる

迷ったら、根元を選んでください。
黒臼洋蘭園によれば、胡蝶蘭の株自体は50年以上生きるそうです。
今シーズンの二度咲きを一回見送ったくらいで、損をした気持ちになる必要はありません。

3本立ちの鉢は、1本ずつ決めてかまいません

贈り物の3本立ちは、多くの場合、3つの株を一つの鉢に寄せ植えしたものです。
茎ごとに別の株なので、切り方をそろえる必要はありません。
葉がいちばん厚い株だけ節を残し、ほかは根元で切って休ませる分け方もできます。

Webデザインの仕事でも、ページの要素を全部目立たせようとすると、かえって何も目に入らなくなります。
鉢の中でも、今回の主役を一本決めるくらいがちょうどいいと感じます。

はさみを入れるときの段取り

刃を消毒してから、節のすぐ上で切ります

作業そのものは数分で終わります。
黒臼洋蘭園の手順をもとに、流れをまとめました。

  • カッターやはさみの刃を火であぶるか、アルコールで消毒する
  • 茎がぐらつかないよう、片手で支える
  • 決めた節のすぐ上、または葉の付け根を傷つけない程度に根元の近くで切る
  • 花が残っていれば、切り花として水に挿す

消毒は、切り口から細菌が入るのを防ぐためのものです。
一つの鉢で何本も切るときは、株を替えるたびに刃をふき直しておくと安心です。

支柱は捨てずに取っておきます

切ったあとの支柱は、株元をしっかり押さえて引き抜きます。
株ごと動くと根に負担がかかるので、ここはゆっくり進めてください。
抜いた支柱は新しい茎が伸びたときにまた使えるので、捨てずにしまっておきましょう。

秋に切るなら、春まで待つつもりで

10月に切った株が咲いたのは翌年の4月でした

二度咲きは、切ってから1〜2か月で花芽が伸びるとよく紹介されます。
ところが秋に切ると、そこまで早くは進まないことがあります。
黒臼洋蘭園が公開している東京都内のオフィスでの記録では、2018年10月27日に切った株が、翌年2月13日の時点で芽を伸ばしていて、2月26日につぼみが見え始めました。
最初の一輪が開いたのは4月10日、茎の先端まで咲きそろったのは5月14日です。
温度管理が十分とはいえない環境だったと園自身が書いていて、それでも半年近くかけて咲いたことになります。

らんや小石川店の解説では、花芽ができる目安は最低気温18℃前後の環境が20〜40日続くことで、花芽が見えてから開花までは2〜4か月ほどかかるとされています。
10月に切って年内に何も動かなくても、失敗と決めつけなくて大丈夫です。
節から出てくるのが花芽とは限らず、高芽と呼ばれる子株が出ることもあります。

葉の付け根から何か出てきたときは、先端の形を見てください。
らんや小石川店によると、花芽の先は平たく手袋やくちばしのような形で、新しい根の先は丸くつやがあります。
節の上で切った茎が動かないまま黄色くなってきたら、枯れた部分の下か根元近くで切り直して、株を休ませる側に切り替えましょう。
一度決めた切り方を、途中で変えてもかまいません。

冬の世話は水と温度に絞ります

切ったあとの株に、特別なことはほとんどいりません。
やることとやらないことは、次のとおりです。

  • 花芽が出るまでは乾かし気味にし、15〜20日に1回を目安に、植え込み材の乾きを確かめてから水を与える
  • レースカーテン越しのやわらかい光に当て、直射日光は避ける
  • 肥料は基本的に与えない
  • 植え替えは4〜6月まで待つ

温度について、三重県の案内は晩秋から春まで10℃以上としています。
ただ、つぼみまで育てたい株は、このブログの越冬対策の記事と同じく15℃を目安にしておくと安心です。
夜の窓辺は思った以上に冷えるので、夕方になったら鉢を部屋の内側へ移しましょう。
暖かくなってからの管理は、季節別の管理カレンダーにまとめてあります。

まとめ

花茎を切る位置は、ねらいと株の状態で決まります。
葉が厚く根も元気で、未使用の節が残っていれば、節のすぐ上で切って二度咲きを試してみましょう。
葉や根に不安があるときや茎が枯れているときは、根元近くで切って休ませます。
3本立ちの鉢なら、1本ずつ別の答えを出してかまいません。

秋に切った株は、春まで待つくらいのつもりでいてください。
わたくしは、葉だけになった鉢を冬のあいだ眺めているのも嫌いではありません。
花がない時期のほうが、葉の厚みや根の色に目が向いて、その株のことがよく分かってくるからです。

まずは今日、鉢を窓辺に寄せて、花茎の節を下から指でなぞってみてください。